斎藤一人の結婚相談室

「迷ったら経済で考える」と解決するんだよ

 誰かと縁があって結婚したいと思えば、すればいいんです。
 ただ、本当にそれがよかったのかどうかは、お互いに話し合ってみないとわからな
いことなんです。
 それで、「本当によかったのかなあ」と思うときだってあるんですよね。
 でもね、結婚したことを後悔する必要なんかはないんですよ。この結婚はダメだと
思ったんなら、別れればいいんですから。
 恋愛というのは一種の狂気ですから、ちょっと頭がおかしくなってしまうところが
ありますよね。
 その勢いで結婚してしまうこともあるんです。問題は、結婚した後に正気に戻って
から、どう考えるかなんですよ。
 この人と一緒にいていいのか、それとも一緒にいないほうがいいのか。
 これを判断するときがくるということなんです。
 でも、人生で大事な選択をするとき、判断するのに迷っちゃうことってありますよ
ね。昔の私も、もちろんそうでした。
 私はそんなときいつも一人さんに相談していました。そして、あるとき一人さんが
とても便利な考え方を教えてくれました。
 それがこの言葉なんです。
「それはね、経済で考えるとわかるんだよ」
 人生の選択で迷ったら経済で考えてみる。これがコツなんです。
 じゃあ、ここでね、結婚を経済で考えてみましょうか。
 これは結婚について、単純にソロバンを弾いてみるというのとは違うんです。
 この人は将来いくら稼いでくるんだろうとか、10年後には部長に出世して年収が
いくらになっているはずだとかいうような、単純な金額上の損得を計算するというこ
とじゃないんですよ。
 その人と一緒に暮らしていて、本当に自分は楽しくやっていけるかどうかを経済の
観点から考えるということなんです。
 楽しくやっていくにはお金がかかります。おいしいものも食べたいし、洋服やバッ
グも欲しい、たまには旅行だってしたいですよね。子どもが欲しいと思っても、お金
がなければ育てていけませんものね。
 結婚してからしばらく経ち、頭が正気になったとき、二人にはお金が足りないと気
づいたとします。
 そのときに、「なんで結婚したんだろう」ってグズグズ思っているだけで、いつま
でも何もしょうとしないような亭主なら、別れてしまえばいいんです。だって、一緒
に暮らしていても楽しくありませんもの。
 でも、このときに、「よし、何とかしょう」と思って行動するような亭主なら、た
とえ、結局は稼ぎが足りないままでも、楽しく暮らせるかもしれません。
 亭主の稼ぎが足りないんなら、奥さんが自分で働いてその分を稼げばいいだけです。
 ただ、奥さんが働こうとすると、イヤな顔をするような亭主だったら、やっぱりダ
メです。楽しくなくなっちゃいますからね。
 逆に、働くのを応援してくれるような亭主なら、奥さんが二人分稼いじゃって亭主
を食わせてしまうという、これまでの逆バージョンだって、楽しく一緒に暮らせるか
もしれません。
 こんなふうに、楽しく暮らすのに必要なお金をどうするかと考えれば、二人で暮ら
すことが楽しいかどうか、ハッキリしてくるんですよ。結婚を経済で考えるというの
は、こういうことなんです。
 人生の選択で迷ったら、自分がしあわせになるのに必要なお金をどうするのかと考
えれば、答えが見えてきます。
 ここで中心になるのは、「自分がしあわせになる」ということなんです。そして、
それをハッキリさせるのが、「お金をどうするか」なんですね。
 これが一人さんの教えてくれた「経済で考えてみる」ということなんです。
 ところで、楽しく一緒に暮らせるかどうかと考えて、片方がイヤだと思えば、離婚
すればいいんですけれど、なかなか踏み切れないという人もいますよね。
 私にもそんな経験がありました。私は、元の夫と一緒にいないほうがしあわせにな
れそうな気がしていました。でも、夫は本当にいい人だったんですよ。だから、どう
しても躊躇してしまっていたんですね。
 それで、私は一人さんに相談したんです。すると一人さんは、いつものあの温かい
声で、こう教えてくれたんですよ。
「おまっちゃん、人間というのはね、二人でも生きられる。
 でも、一人でも生きられるんだよ。
 本当は自分がどうしたいのか、それを考えて決めればいいんだよ」
 私は一人さんの言葉を聞いて、とても勇気が湧いてきたんです。それで、私は二人
でしあわせに生きられないかと、いろいろと試行錯誤してみたんですよ。夫も私の考
え方を理解しようとして、協力してくれたんです。
 そして、一人で生きるほうがしあわせだと確信したときに、二人は別れることにし
ました。
 そこにはイヤな気持ちなんか微塵もなかったんです。むしろ、結婚から大事なこと
を学び終えて、「結婚を卒業する」という爽やかな気持ちだったんですよ。
 人間は一人でも生きられます。
 そちらのほうが楽しければ、そうすればいいんですよ。